これは、ゲームの体裁をとった校訂作業です。あなたは民俗資料整理室の担当者として、ある村から奉納された写本《桃太郎》を読み、本文を確定していきます。
誰もが知る筋書きは、一字も書き換えません。あなたが決めるのは、物語の結末ではありません。同じ一文を、どう読むか──ただ、それだけです。
けれど、読み方を選び終えたとき。めでたい話は、最初からそう読めたという顔をして、別の貌(かお)であなたを見ています。
この校訂で、本文は一字も書き換えていません。あなたが「黄泉(よみ)の読み」を選んだ箇所も、原典《桃太郎》の語そのままです。怖いのは、誰かが付け足した嘘ではなく、最初からそう読めたという事実のほうです。
つまり「子のない夫婦・川上の桃・みるみる育つ子・団子で従えた供回り・島の征服・持ち帰った財宝・幸せな結び」という誰もが知る筋書きは、まるごと保たれたまま、別の物語に合流します。あなたが選んだ読みの濃さで、合流する先が変わっただけです。